首痛

首痛

50代女性
来院に至った経緯
元々首や腰に違和感があったが、1年前から急に首の痛みが酷くなり、常に首の可動域が制限されている感じになってしまった。特に右に向きにくい状態が続いており、左首につまりを感じたり、背中や首が熱くなる感じがしたり、頭が常に重く、両肘の痛みなど身体の色々な部分に症状を感じ不安になっていた。また7年以上前から慢性的な腰痛もあり、整形外科ではヘルニアの診断を受けた事もあるようだ。下を向く仕事の関係もあるのか、整形外科ではストレートネックと言われたが、薬と湿布のみで治療らしい治療はしてもらえなかった。整形外科以外にも、接骨院や整体やリンパマッサージなどあらゆる治療院に行ってみたが、症状はほとんど改善する事はなかった。そんなある日、youtubeで塩川満章先生の動画が流れてきて、こんな治療を受けたら治るかもしれないと思い、近くに塩川満章先生のお弟子さんがいないかと検索したら、たまたま近くに塩川先生と同じような検査や矯正をしている治療院を見つけ来院に至った。
初診の状態
  • 01

    首の可動域制限

  • 02

    頸部過緊張

  • 03

    左仙腸関節可動域制限あり

経過と内容
【所見】
頸部:ROM制限あり(左回旋40°右回旋30°伸展30°右側屈30°)
バレ・リュー(-)マイグネ(-)

【体表温度検査】
T1、T7、L5、左SI

【視診】
左耳介上方
右肩峰上方
右短下肢

【静的触診】
左SI浮腫
中部胸椎乾いた肌の質感
上部胸椎浮腫あり

【動的触診】
Fix:左SI、L5、T7、T1 
Hyper:L3、C6

【レントゲン評価】
・腰部側面像にてL5の椎間板スペースの段階D5とサブラクセーションの慢性化を確認
・頸部側面像にて頸部生理的弯曲の消失(逆カーブ)しており、椎間板スペースの段階(D4)とサブラクセーションの慢性化を確認
・中部胸椎にて側弯あり

【リスティング】
LiliASIN、T1PRS

【経過と内容】
初診時の状態は頸部の過緊張と上部胸椎に大きな浮腫があり、頸椎の明らかな可動域制限がみられた。
レントゲンでは、腰部がD5レベル、頚部は生理的弯曲が消失し逆カーブ状態になっており、慢性化している状態であったが、遠方の事もあり1週間に1回のケアから始める事にした。
3週目(3回目のアジャストメント)では、静的触診では左仙腸関節の浮腫感の軽減と、上部胸椎の浮腫感の軽減が確認できたが、首の可動域はまだ改善まで至っていなかった。しかしながら腰痛や背中の痛みは大幅に改善。朝起きるときに必ず起こる腰や背中の痛みが無くなってきた。
5週目(5回目のアジャストメント) では、首の可動域が(右回旋50°伸展40°それ以外は正常値)改善してきた。左首のつまりもほとんど無くなってきた。上部胸椎の浮腫も少なくなってきた。仙腸関節や頸部のサブラクセーションも改善の傾向があった為、2週間に1回のケアに以降した。
10週目(8回目のアジャストメント)では、首の痛み、首の可動域制限、腰痛などすべて改善。現在は、身体のメンテナンスとして定期的なメンテナンスを4週間に1回のペースで継続している。

考察
今回の首痛は、上部胸椎(T1)の問題が長期的に続き、頸椎を支える筋肉に影響を与え、首のつまりや可動域制限に繋がっていたと考えられる。問診では自律神経系症状はみられなかった為、交感神経と副交感神経のバランスを加味せず、筋骨格系(全脊柱を対象)でアプローチを開始した。
腰部の椎間板の段階はD5レベルと椎間板には最低でも5年から10年以上前から負担がかかっていることが確認できた。頸椎の生理的弯曲は前弯カーブ(半径17cm)で重たい頭を支えているのが正常だが、逆の後弯カーブになってしまっていた。
患者さんの訴える痛みの場所は第6頸椎であったが、レントゲン評価や動的触診の結果、第1胸椎のサブラクセーションによる補正の問題と判断し、左仙腸関節と第1胸椎のみを矯正(アジャストメント)した。最初の数回は首の痛みの症状が全く変化しなかった為、自分の最初の検査に不安を抱いたりしたが、改めて検査の綿密に行い最初に決めたサブラクセーションを貫いてアプローチを続けていった。もちろん患者さんへの説明も非常に重要だった為、しっかりフォローも行った。そんな状態であったが、5回目のアジャストメントから症状は一転、首の可動域が正常値になってきており、8回目のアジャストメントでは痛みは完治した。
人間には「与えられた環境に対して適応する力」という偉大な力が備わっており、常に下を向く仕事によって骨格がバランスを崩していた事で、その環境に適応しようとして、頸椎が逆カーブになり、首の筋肉を過緊張させ首を支えていたのだと考えられる。
実際痛みがあった場所(第6頸椎)ではない、それより下の場所(第1胸椎)にあったサブラクセーションを、カイロプラクティックによって根本的な原因を取り除いた事で、症状は大きく変化していった。
決して逆カーブは良くなって正常カーブになった訳ではいないが、根本原因を特定しアジャストメントによって神経の流れが正常に働くことで、自然治癒に繋がったものと考えられ、神経の働きの重要性が分かる症例である。

執筆者孕石 尚志

昭和48年7月 静岡県島田市出身
東京カイロプラクティック師協会認定の附属治療院にて副院長を任され、2005年7月島田市にて開業。近隣医院と提携したレントゲン評価を導入した正統派カイロプラクティック院として評価され、新規患者の約7割が紹介という広告に一切頼らない口コミによるネットワークを確立。現在ではカイロプラクティック界の名門シオカワスクールにて、塩川満章D.C.の内弟子として、塩川雅士D.C.のもとカイロプラクティックの講師として精力的に活動中。

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